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【漫画感想】『MIX』第111話「あいつだけに」”立花兄弟の2度目の夏が終わった日…。父英介の死がもたらしたものは…。”あらすじ紹介&レビュー感想!!

2022年1月12日 - MIX
【漫画感想】『MIX』第111話「あいつだけに」”立花兄弟の2度目の夏が終わった日…。父英介の死がもたらしたものは…。”あらすじ紹介&レビュー感想!!

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【あらすじ】
投馬、走一郎、音美。悲しみを胸に季節は秋 夏の高校野球東東京大会、明青学園は決勝に進出! 甲子園まであと1勝に迫る中、投馬の実父が亡くなってしまう。投馬がマウンドに上がることなく、敗れた明青学園。投馬、走一郎、音美それぞれが悲しみを胸に抱え、季節は秋へ―――

『MIX』第111話「あいつだけに」あらすじ紹介&レビュー感想

第111話「あいつだけに」あらすじ紹介

*『MIX』第111話「あいつだけに」は2022年1月12日発売の『ゲッサン』2022年2月号に掲載されたエピソードです。リンクは記事下部にあります。

第111話「あいつだけに」あらすじ紹介

投馬たちの2度目の夏が終わったあの日…。明青学園と健丈による東東京大会 決勝戦。しかし、その試合、実の父 英介を亡くしたばかりの投馬は走一郎の判断でマウンドを下ろされていた。自分に投げさせてくれ、という投馬だったが、明らかに試合に集中できておらず、さらに”俺がマウンドに上がったら同情して手加減してくれるかも”という自虐的な発言までもする姿に大山監督もそれを許すことはしない。一方、普段通りの活躍を見せる走一郎は”いつもと何にも変わらねえんだな。お前は。”と言う投馬の言葉に対し”初めてじゃねえからな。父親を亡くすのは それに本当の父親じゃねえしな。”と答えるのだった…。投馬の代わりにマウンドを預かった夏野は奮闘し、健丈打線を相手に二桁安打を打たれながらも9回を3失点に抑えたが、彼らの夏は幕を閉じる。そして、夏の熱気も覚めた頃、英介のいなくなった立花家には…「あいつだけに」。

内容&見どころ

今回のエピソードでは、少し時間を遡って健丈との東東京大会決勝の様子が描かれます。しかし、やはり人一人の死が周りに与える影響は計り知れないものがあります。家族である投馬と走一郎はもちろん、戦友である大山監督の英介の死を悼む姿もまた…。そして、英介と言う”父親”の死が投馬と走一郎の”兄弟”にもたらす難しさは他の類を見ないものです。こ以上ないと言うくらいに人間関係が絶妙に入り組みます。おそらく投馬が一番悲しく、走一郎が一番辛い立場です。さらに投馬は自分が悲しむ前に周りを気にしてしまうような性格(多分)なだけに…。さらにタイトルも「あいつだけに」と言うことで、ここから”家族”の絆と言うものが浮き彫りになってきます。ある意味正念場ですね。前回の感想でも書いたように、英介の死が投馬にもたらしたものはある種”孤独”ですから…。走一郎の”一見 冷酷”な態度も、その後の関係性も目の離せないところです。

*『MIX』第111話「あいつだけに」は『ゲッサン』2022年2月号に掲載です。感想を読む前に、本編を読んでおきたいという方はまずは下記リンクから購入できます。

『ゲッサン』2022年2月号



『MIX』第111話「あいつだけに」レビュー感想

*ここからはネタバレを含みます。

夏の終わり。健丈との試合では…。

さて、今回のエピソードでは健丈との試合の様子が描かれました。前回のエピソードでは突然、決勝の終わった後の立花家に場面転換されていて驚きましたが、健丈との試合は一応ちゃんと行われていたのですね。走一郎はともかくとしても投馬も決勝戦に出場していたことは個人的にはかなり意外でしたね。もちろん実の父親が亡くなったピッチャーなんてやらせてもらえませんでしたけど…。

甲子園の予選なんてかなりスケジュールがみっちりと詰まっている印象ですが、通夜に葬式、バタバタした後の試合となると、気持ちの整理なんかしている暇もなかったであろうことは投馬の態度からも見て取れます。一方の走一郎はいつも通りの活躍で、投馬からも”いつもと何にも変わらねえんだな。お前は。”と皮肉(?)を言われるほどです。

走一郎とて、”本当”の父親ではないと言え相当に堪えているはず。普段通りにできるはずがないんですよね。何より、一番に 悲しむべき、あるいは悲しんで良い人(この場合は投馬と真弓かな)の周りいる人間は、それはそれでキツいものです。特に、本人達が悲しみに耐えている姿をそっと見守らなくてはならないのは、亡くなった人物も、悲しみに暮れる人物も、どちらも大切な人間だけにその振る舞いは難しいものになります。

“初めてじゃねえからな。父親を亡くすのは それに本当の父親じゃねえしな。”などという、言葉だけを聞けば、失言にもほどのあるセリフを投馬に投げかけていますが…。このセリフ中でも言っているように、一度 実の父親を亡くし、その辛さを経験している走一郎が、そして兄弟としても、バッテリーとしても誰よりも投馬のことを理解している走一郎が投馬の気持ちを考えずに こんな発言をするとは考えにくいですよね。

実際、前回のエピソードでは、不器用ながらも英介のいなくなった立花家の雰囲気を気にしているような様子も描かれていますし、走一郎なりの思いやりがあるのでしょう。兄弟としてもバッテリーとしてもここが一つの正念場なのかな。それにしても、二人揃って実の父を失うとはなぁ。

英介亡き立花家で投馬はたった一人…。

さて、前エピソードで原田の家に招かれた投馬でしたが、その辺りの話は特に広げられることはありませんでしたね。原田が投馬を連れて行ったのは、ただの気まぐれだったのかな? 特に用事はなかったのだろうか?? それとも、投馬は何かを知らされたのだろうか。

ドラゴンのマスターが言っていた通り、英介が死んでしまったことで立花家に投馬と血の繋がっている人間はいなくなってしまいました。もちろんすでに血の繋がりなんて関係ないほどに”家族”であるのでしょうが、やはり投馬は自分の居場所を見失う…というか、疎外感を覚えているのかもしれません。原田の家から帰宅した投馬が、玄関の前でたたずむ姿からはそんな空気感を感じずにはいられませんでしたね。

真弓や音美は、”家族”とはいえ実際に血の繋がった肉親を失った投馬へ少なからず、気遣いというか遠慮があるでしょうし、それが投馬に疎外感を感じさせてしまうおそれもありそうです。そう考えると、走一郎の逆に気遣いのない(?)態度はそんな事態を回避するためのものなのかも…。

連載開始初期から血の繋がりのない家族というのはかなり難しい題材だなぁ、とは思っていましたが…。この状況はなかなか。でも、サクッと深いところまで掘り上げるのもまたあだち充節ですよね。自分だけが血の繋がりがなくなってしまった家族の中で投馬がどうするのか、これから立花家の家族がどうなっていくのか、ますます目の離せないそんな第111話でした。

ただ、今回のエピソードでもまだ英介の死因はわからないままでしたね。上杉和也の時とは違い、救急車の音なども描かれなかったし、交通事故では無いのじゃ無いかなとは思っていますが、元野球部のスポーツマンであり頑強そうな英介が持病持ちというのも…。なぜ亡くなったのか、次のエピソードあたりで明らかになるのだろうか? もしかして、原田はそのあたりを知っていたのかな…なんて。

そういえば、大山監督の嘆き方も大人の男の友情的な良さがありましたが、春夏の”でも 飲めない投馬くん達は、どうしたらいいのかな…”という台詞は大人である自分としては非常に突き刺さる言葉でした。大人よりももっと傷つきやすいのに子供は酒という自己防衛の回避手段を使えません。正面から傷を受け止め、乗り越え強くなるしかない。これは子供の特権であり、試練ですよね…。



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