
『パラレルパラダイス』最新刊情報

『パラレルパラダイス』最新巻
“世界でたった一人の男・陽太、絶世の美女騎士の揺れる心を掴めるか!? 累計350万部突破の異色異世界ファンタジー! 現実世界で金城に深く傷つけられた陽太は、ルーミと共に金城から逃げることを選ぶ。一方リーメアリーは、国母への忠誠心と疑念の間で揺れていた‥‥。白く輝く美女騎士の憂い。陽太は晴らすことができるのか!?”
『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」あらすじ紹介&レビュー感想
『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」あらすじ紹介

*『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」2021年2月7日発売の『ヤングマガジン』2022年10号に掲載されたエピソードです。
『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」 あらすじ紹介
県大会前夜、金城はヨータの母と仁科を攫う。そして、二人に”お前らのどちらかを殺す 選べ”と選択を迫る。二人が醜く命乞いをして罵り合う姿を期待していた金城だったが、ヨータの母は迷いなく自分を殺せと返答する。他人である仁科のために命を差し出す彼女に、その理由を問う金城。だが、ヨータの母親の話す”母親として”真っ当すぎるその”理由”は金城のトラウマを抉り…。翌日、県大会でヨータは金城と立ち会うも、母親のことが気になって集中できずに容易に一本を許してしまう。そんなヨータに金城は徐に母親の誘拐について仄めかす。母の誘拐が金城の仕業であることを確信したヨータは、母と仁科を取り戻し、金城に罪を償わせると怒りをあらわにする。しかし、金城はヨータの母の死の事実とともに、冷ややかに告げる。”お前がおれに勝とうなんて考えた報いだ”と。
内容&見どころ
回想編もクライマックスです。母と仁科の所在が掴めないまま、ついに県大会が始まってしまいます。ヨータは動揺を隠せないまま金城と戦うことになりますが、試合の最中に金城がヨータの母親と仁科を攫ったことを仄めかします。ヨータと金城のやりとりから金城の異常性がさらに明らかに…。そして、母の死を告げられたヨータは一体どうなってしまうのか。一方、今回のエピソードでは金城とヨータの母親とのやりとりも描かれます。金城の暴力性のせいで、あまり長い対話ではありませんが、これまたかなり重い…というか深い…テーマ。この二人は多分会ってはいけなかったんでしょうね…。そんな感じで結構きついエピソードです。
それでは『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」の感想です!!
『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」は『ヤングマガジン』2022年10号に掲載されています。感想を読む前に、本編を読んでおきたいという方はまずは下記リンクから購入できます。
『ヤングマガジン』
『パラレルパラダイス』第180話「愛を蔑んだケモノ」レビュー感想
*ここから先はネタバレが含まれます。
“母親”と”子供”。子を愛さぬ親はいない…。
さてと、岡本作品はなんというかいつもギリギリの重たいテーマを扱いますが、これまた重たいテーマが出てきましたね。もちろん、なにがどうひっくり返っても金城の行いを正当化できる要素はありませんが…。
上でも書きましたが、金城とヨータの母はおそらく会ってはいけない、会うべきではない人物同士だったのでしょう。金城は母親から虐待を受け心的トラウマを持ち、自らを守るために暴力を求めた(…というか縋った?)人間です。一方で、ヨータの母は今回のセリフからわかるように、まさに良くも悪くも”理想的な母親”です(一面しか描かれていませんが)。
実際、彼女が金城に向けて話した内容は、”母親として”理想的で美しい内容です。しかし、それは”母親に愛されなかった”金城からすれば綺麗事にしか過ぎず、彼の心に届くことはありませんでした。もし金城がもっとも前にヨータの母親のような人物に巡り会えていれば全ては違ったのでしょうが…。

ヨータの母は非常に素晴らしい母親ですね。ただ如何せん彼女は”きれい”な世界に住んでいました(それが良いとか悪いとかではなく)。虐待やネグレクトなど、言葉や知識としては知っていても、それらが実際に存在する世界とは無縁の世界に住んでいたのです。だからこそ、迷いなく”子を愛さない親はいない”なんて言葉を発することができる。
しかし、金城は本人の意思に関係なく、実際にそういったものがある世界で育たざるを得なかったのですよね。正直なところ、個人的にはヨータの母は母親としてこれ以上ないほど立派だし、金城の行いはこれっぽちも許容できません。ただ、”母親に捨てられたおれは…育つ意味がなかったとでもいうつもりか…”というセリフだけはどうしても否定できないんだよなぁ…(もちろんヨータの母の言葉にはそんな意図はありません)。
親に愛されなかった子供はどうしたら良いのだろうか…。ほんとに考えさせられてしまう部分ですね。
ただ、それも金城の悪行を正当化する理由にはなりませんがね。というか、金城にとってヨータの母は殺してはいけない人間だったんだよなぁ。
そして、金城の狂気と暴虐はどんどんと加速していきます。何より恐ろしいのは、セリフにもルビが振られているようにこれが全てヨータが金城に勝とうと”考えた”ことに対する報復なのです。そう、”考えた”だけ。それだけで金城はここまでのことをしたんです。

それにしても無抵抗のヨータの母の顔を思いっきり蹴るとか…。今回のエピソードもなかなかに目を覆いたくなるような内容でしたねぇ。まあ、最終的にヨータの母親を殺してしまうのですから、それも今更なのかな…。
ただ重ねて書きますが、ヨータの母は金城にとっても絶対に殺してはいけない存在だった気がします。そういう意味でも、やはりヨータの母と金城はお互いであってはいけない、出会うべきではない二人だったのでしょう。せめて、ヨータの母との対話で良心のかけらでも覗いていれば…。
しかし、ここまでの理不尽を積み重ねてきてしまうともはや金城にはいっぺんたりとも”許し/救い”(作品的にも)が与えられる要素がなくなってしまいそうですね。ある意味では間違いなく被害者でもある金城ですし、なんとなくそのあたりを強調して描いているようにも感じるのですが、どうなんだろうか…。金城は絶対悪として裁かれていくのかな??
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